マンションにお住まいの皆様にとって、大規模修繕工事は避けては通れない重要なイベントです。
この工事は、住み心地を向上させたり、マンションの資産価値を維持するために必要不可欠なものです。
しかし、工事内容や費用など、確認すべき点が多くあり、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
特にタワーマンションでは、大規模修繕工事がさらに複雑なケースが多いと言われています。
そのため、事前の準備や計画が非常に重要です。
なぜなら、タワーマンションにおける大規模修繕工事にはさまざまな要因が絡み合っており、十分な準備が必要だからです。
具体的には、建物の耐久性を保つために外壁や屋根の補修、共用部のリニューアル、設備の更新などが行われます。
これらの工事は、住民の生活にも多大な影響を及ぼすため、計画的かつ円滑な進行が求められます。
したがって、タワーマンションにおける大規模修繕工事には、専門的な知識や経験が不可欠です。
十分な準備と計画を立てることで、住み心地の向上や将来の資産価値の維持につながる可能性が高まります。
タワーマンションの大規模修繕工事
タワーマンションの大規模修繕工事を行う主な目的は、建物が経年劣化によって生じる不具合を修理し、住民が安全に生活できる環境を保つことです。
修繕工事を計画的に行わずに先送りしてしまうと、余計な費用がかかったり、取り返しのつかない事態に至る可能性があります。
事前に策定された長期修繕計画に基づいて、適切な修繕を行うことで、住民が快適に暮らせるマンションを長期間維持し、資産価値を高めることができるのです。
大規模修繕工事の内容
タワーマンションの大規模修繕工事には、主に以下の3つの内容が含まれます。
まずは防水工事です。
屋上、外壁、開口部などで行われる防水工事は、建物内部を損傷から守るために欠かせない重要な作業です。
屋上の防水工事では、塗膜防水、シート防水、アスファルト防水のいずれかの方法が使用されます。
そして外壁の塗装や開口部のシーリング補修などによって、給水・排水設備の設備交換も考慮されます。
次に塗装工事です。
屋上、エントランス、外構の鉄部塗装は、マンション全体の外観を美しく保つために欠かせない作業です。
特にエントランスや外構は、多くの人の目に触れる場所であり、塗装の剥がれがあるとマンション全体のイメージが損なわれる可能性があります。
外壁が吹き付けタイルである場合は、塗装のやり直しやパネルのつなぎ目のシーリング、タイルの浮きや剥がれの補修が必要です。
また、建物の躯体にクラックがある場合は、補修材の注入や被覆、充填などの方法で対応します。
大規模修繕工事では、建物の構造やデザインだけでなく、超高層の建物特有の課題や個別性の高いデザインに合わせた工事が求められます。
したがって、単なる工事の実施だけでなく、高度な専門知識と技術が必要とされるのです。
タワーマンションの大規模修繕工事は難易度が高い
タワーマンションにおける大規模修繕工事は、その難易度の高さが指摘される要因がいくつかあります。
まず、多くの住人が暮らすため、工事による騒音や振動への配慮が必要です。
さらに、建物の高い所での作業は危険が伴うため、安全対策が特に重要です。
また、大規模な修繕工事は時間とコストがかかるため、住人に与える影響を最小限に抑えるための計画が欠かせません。
さらに、専門的な技術や知識が必要であるため、信頼できる施工業者の選定も慎重に行わなければなりません。
これらの要素を考慮すると、タワーマンションの大規模修繕工事は高い難易度を持つ作業と言えるでしょう。
工事を行うのが難しい
大規模修繕工事を実施できる施工業者は、主に新築時に建物を建設したゼネコンなど一部の企業に限られることが一般的です。
特にタワーマンションの場合、まだまだ工事の実績が少ないため、工法やノウハウが確立されていないことが主な要因です。
特に高層階では、風の影響を受けやすいため風対策が必要とされるほか、高所での作業に特化した高度な技術や知識が必要となるため、タワーマンション独特の構造上の問題が存在します。
区分所有者が多く合意形成が難しい
タワーマンションは一つの建物に100戸以上、場合によっては1,000戸以上の住戸がある大規模な集合住宅です。
そのため、管理組合による区分所有者間での意見の一致が難しいという問題が生じることがあります。
高層階と低層階では、住民の収入や考え方に違いがあることがあり、これが対立や意見の相違を引き起こすことがあります。
高層階は風雨の影響を受けやすく、外壁の損傷が低層階よりも顕著になるため、修繕や改修に対する要望も異なる傾向があります。
また、自身の住居として購入した区分所有者と、投資目的で購入した区分所有者とでは、修繕に対する意識や優先度が異なることも、合意形成を難しくしています。
大規模な修繕工事が行われる際には、足場が建設されることで、タワーマンションが持つ素晴らしい景観を楽しむことができなくなります。
そのため、足場の設置計画には、一部の住戸でも眺望が損なわれないように配慮する必要があります。
これはタワーマンションならではの難題ですね。
階層によって設備の重要性が変わる為
タワーマンションでは、階層によって設備の重要性が異なります。
高層階に住んでいる方は、高層階用のエレベーターが故障すると生活に影響がでる可能性があります。
一方、低層階に住んでいる方はそのエレベーターの故障がそれほど重要ではないかもしれません。
そのため、修繕費用の捻出に関して、低層階と高層階の居住者で異なる意見が出ることもあります。
また、タワーマンションには、キッズルームやバー、フィットネスルームなど、一部の住民しか利用することのできない共用設備も多くあります。
これらの共用部分の修繕費用についても、議論が生じることがあります。
自分が直接利用しない設備にお金を費やすことについて、納得がいかないと感じる方も少なくありません。
工事費が割高になる
タワーマンションでは、一般のマンションよりも大規模修繕工事の費用が高額になることがあります。
これは、タワーマンションの世帯数が多く、規模が大きいため、工事期間も長くなる傾向があるからです。
そのため、修繕積立金が不足する可能性が高くなります。
多くの場合、タワーマンションの建設を行った施工業者(ゼネコン)の子会社が大規模修繕工事を請け負うことが多いです。
そのため、修繕費や改修費が割高になる傾向があります。
さらに、高層階では枠組足場を組むことが難しいため、ゴンドラを使用した作業が必要になり、仮設工事費用が全体の30%にも及ぶこともあります。
また、タワーマンションのエレベーターやポンプなどの設備は特注となることが多いため、設備費用だけでも一般的なマンションよりも高額になります。
さらに、タワーマンションは個別性の高いデザインに合わせた修繕工事が必要となることが多いため、工事費用がさらに上昇することも考えられます。
いずれにせよ、タワーマンションの大規模修繕工事は通常、2〜3年にわたる長期間に及ぶことがありますので、その点も考慮しておくことが重要です。
タワーマンションにおける大規模修繕工事の周期
マンションの大規模修繕工事のサイクルは、通常12年で行われることが一般的ですが、近年では18年という長いサイクルが注目されています。
これは、国土交通省が設定したマンションの大規模修繕の目安としている期間です。
2008年にこのガイドラインが導入されましたが、現在では技術や材料の品質が向上しており、より長いサイクルが求められています。
実際、タワーマンションでも18年ごとに大規模修繕工事を行う例が増えています。
そして、このような長周期化はコスト削減にもつながります。
18年サイクルの場合、より耐久性の高い工事や定期的なメンテナンスが必要ですが、それでも修繕回数を減らすことで、長期的に見てコストを節約することが可能です。
まとめ
タワーマンションの大規模修繕工事は、主に外壁の塗装や防水工事、設備の取り替えなどが含まれます。
通常の足場設置方法とは異なり、ゴンドラや移動昇降式足場が使われることが多いです。
気象条件(風や雨など)によって工事進捗が影響を受けやすいため、風対策や飛散物の防止対策が必要となります。
このため、ゴンドラの利用や高額な設備の必要性から、修繕費用は高額になることがあります。
費用に不安がある場合は、工事期間の長期化も考慮すべきです。
タワーマンションはデザイン性が高く、外観が特徴的な建物が多いため、修繕工事もそれに合わせて複雑になります。
高層階、中層階、低層階では足場の種類や工事の方法が異なることがあり、共用施設であるラウンジや屋上デッキの改修も検討する必要があります。
各階の構造や設備に合わせた工事を行う必要があります。
また、上層階と下層階での設備や価値観の違いから、合意形成が難しい場面もあるかもしれません。
入居者や組合員に対して丁寧な説明や配慮を行うことが重要です。
これらの準備をきちんと行い、大規模修繕工事に備えることが大切です。